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誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

 

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仕事柄、デザインってちょーーー大切だと思ってますです。って、デザイナーではないですけどね。

細かい説明など無くても、直感的に何をすべきか、何が起こるのか分かる「自然なデザイン」とは、ってことを、実例を交えつつ、丁寧に説明されています。

・ものがどのように機能するのかについてのこれ以上の手がかりは、目に見える構造から得られる。とりわけ、アフォーダンスと制約と対応付けからだ。

例えば、はさみを見て、使い方を迷う人は少ない訳で。はさみデザインした人、グッジョブ。

・行為遂行の7段階理論。ゴールの形成、意図の形成、行為の詳細化、行為の実行、外界の状況の知覚、外界の状況の解釈、結果の評価、と言う段階を踏んで、人間は何かしらの行動をしている訳で。はー。

・よいデザインの原則
1.可視性 自分が操作している対象がどんな状況で、どうなりうるのかが目で分からないとね。
2.よい概念モデル 操作とその結果の表現に整合性があって、一貫的かつ整合的なモデルがユーザの頭の中に描けないと、どうして良いか分かんないっす。
3.よい対応付け 行為と結果、操作と効果、システムの状態と目に見えるものの間に対応関係が確立していること。
4.フィードバック 行為の結果がフィードバックされないと不安で不安で。

・1セント硬貨は他の硬貨と区別できれば良い。

誰だ?半フラン硬貨と重さが同じ10フラン硬貨をデザインしたのは?!

・思い出させるもの(reminder)にはシグナル(何か思い出さなくてはいけない、ということ)とメッセージ(それが何かであるか、ということ)がある。

これらが両方ないと、思い出すことなんてとてもとても。

・おんなじスイッチがずらーっと並ぶ昔のSFのような操作板は、事故を起こしてください、と言っているようなもの。

実際の原子力発電所では、操作員の方が、同じ形状のスイッチのノブをビール樽の取っ手に置き換えてしまったとのこと。こちらも、グッジョブ。

・エラーにはスリップとミステークがあります。

スリップは自動化された行動から生じ、ミステークは意識的によく考えた結果生じるとのこと。スリップには、以下の六種類があるそうで。
1.乗っ取り型エラー(capture errors) 紙の枚数を数えていたら「1、2、3、、10、ジャック、クイーン、キング」ってなったり。さっきまでトランプしていたんですと。
2.記述エラー(description errors) 汗臭くなったTシャツを洗濯機でなく、トイレの便器に投げ込んだり。まあ、共通点ありありですけど。
3.データ駆動型エラー(data-driven errors) あまりに慣れ親しんだデータを乱用したり。
4.連想活性化エラー(associative activation errors) オフィスの電話に「どうぞお入りください」と言ったり。
5.活性化消失エラー(loss-of-activation errors) 何かしようと寝室に行ったはずなのに、行ってから何をしようとしたのかを忘れたり。
6.モードエラー(mode errors) 上書きモードになっていることを気付かず、ワープロ打ち続けたり。

んまあ、ホントに人間の脳と来たら。。

だからって、ミスした人を責める前に!ホントにそのデザイン適切なの!?と著者の方はくり返し警告しています。

過去の歴史を振り返ってみても、良いデザイン、そうじゃないデザインってのがたくさんある訳で。

昔の黒電話、床に落としても電話が切れないように、フックの周辺の支持台が作用していたんですねー。知りませんでした。。火災の時、地下まで行かないように、一階部分に柵のあるアメリカの階段。

一方、スライドドアとぶつかるガソリン給油口、日産の車でした。。

・機能追加主義(creeping featurism)の弊害

どこぞのオフィススイートのことでしょうか。。って、自分を顧みても心当たる節あり。この結果、数百ページに渡るマニュアルをユーザに強いるなんて本末転倒。かつて、親にオーディオのマニュアルを書き下ろしたことを思い出しました。。

・よくないデザインをする方法

逆説的ですけど、これを知ってこそ、良いデザインができるのかも。

1.対象となるものを目に見えなくすること。
2.恣意的にする。 保留するには437を押してください。とか。
3.一貫性をなくす。
4.操作をわかりにくいものにする。
5.無作法にする。 ユーザがエラーをしたらガミガミ言え!
6.操作を危険なものとする。 このボタンを押せば、編集中の結果はすべてクリアされます。元には戻せません。とか。

とまあ、書き始めたらきりの無いくらい、含蓄ありまくりなのでしたとさ。

デザインにおいては、デザインの対象がどのように使われるのかを検討すること。そして、陥りがちなのは、「デザイナーはデザインしている間に自分で設計指定いる道具に習熟してしまうことが多い。一方、ユーザが習熟しているのはその道具を使って行おうとしている作業なのである
」ってこと。ハッとしますです。

で、最後にある言葉。

「よいデザインをもたらしてくれた人には、心の中で賞を贈ろう。花も贈ろう。よいデザインをしてくれなかった人には、きびしい批判をしよう。その人には雑草で十分である。」

はいーー、今の自分は、まさに雑草で十分な状態。。精進しますです。。